ルックの掃きだめ

怪文書倉庫

ATRI -My Dear Moments- 感想

 終えたのは半月くらい前でしたが、ATRIの感想をば。
アニメ化するよ~ってことで、前から気にはなってたけど重い腰を上げて手を付けました。アニメ楽しみですね。

 ロープラ作品ですが、ストーリーはそれなりの文量。ロープラとミドルの間くらいの体感?
グラも音楽もシステムも十二分に良いので、全然5,6000くらいしてもよさそう。
 コスパ抜きにしても十分面白くていい作品でした。

 

あらすじ

 

 原因不明の海面上昇が発生し、多くの地域が海に沈み続けている近未来。

 事故で片足を失った主人公、夏生は、亡くなった祖母の借金を返すため、海の底に有るという祖母の遺産をサルベージすることに。
 海の底で見つけたのは、カプセルに入っていた少女、アトリだった。ロボットであるアトリは夏生を「マスター」とし、夏生の足となること、前のマスターの命令を果たすことを告げた。

 アトリが定めた45日の期限、アトリが前のマスターの命令を果たすための、そして夏生の「足」として共に過ごす日々が始まる。

 

登場人物

アトリ

 

  

 夏生が祖母の倉庫からサルベージした少女型のヒューマノイド。感情表現豊かで人間と見紛う程精巧に作られている。
 口癖は「高性能ですから」 その言葉通り、ヒューマノイドらしく熟達した家事が出来る…訳ではなく、家事は絶望的なほどに出来ない。ポンコツと言われると怒る。
 前のマスターが残した命令を果たすための45日間を、新しいマスターの夏生と共に過ごしていく。

神白水菜萌

 島に住む女の子。町長の娘で、街の人たちからも人気者。幼い頃に少しの間島で暮らしていた夏生と共に過ごしていた。
 根っからの真面目で、面倒見が良い。先生が居なくなった学校で、不慣れながらも残った子供たちの先生の代わりとして日々頑張っている。

野島竜司

 島の町工場の息子。海面上昇の影響で工場が海に沈んでしまい、休業を余儀なくされ、竜司もその影響でやや荒み気味。
 言動は荒いが子供たちからの信頼は厚く、なんだかんだ面倒見が良い面もある。

名波凜々花

 早くに両親を亡くし、学校に住む女の子。元気で活発でよく動く。
 本を読むのが好きで、勉強にも積極的。吸収も早く地頭が良いタイプ。

キャサリン

 祖母を亡くした夏生の下に来た借金取り。祖母の残した借金を夏生に返させるために、海に沈む遺産のサルベージを提案した。
 素性が不明で、町の中でも噂になっている謎の女。

斑鳩夏生

 

 幼い頃に事故で母親と右足を失くした青年。過去、アカデミーと呼ばれる都市の学校に通っていたが、諸事情で退学し、祖母の住んでいた島に移り住んだ。
 事故の経験から、度々幻肢痛に襲われる。
 海底からサルベージしたアトリと共に、限られた時間を過ごしていく。

 

感想・総評(ネタバレなし)

 短めな話ではあったけど、全体として起承転結がわかりやすくてよかったです。特に中盤の「転」に当たるであろう部分は情緒がおかしくなった…
 所謂ギャルゲーとかと違って完全1本道な分感情移入もしやすくて、だからこそ要所要所で夏生と一緒に心を動かされるようなタイミングがあった。

良かった点
  • 分かりやすいが、感情移入しやすく心動かされるストーリー
  • 音楽、CG、ボイスどれをとってもハイクオリティ
  • 価格帯を含めたとっつきやすさ

 全体を通して凄く勧めやすい作品だなと感じて、特に値段とか長さに関してはそうなんだけど、値段が張ったり文量が多すぎるとやっぱりノベルゲー慣れてない人にはやりづい節はあるので、そういう点でも入りやすいかなと。もちろんクオリティは値段不相応なくらいに高いので、ノベルゲー慣れてる人でも十分満足できるレベルかなあ

気になった点
  • 後半の展開の早急さ
  • CGの少なさ

 CG枚数に関しては長さに比例するのでまあ少ないと言ってもそんなに気にならないかも?あまりこの価格帯のものもやらないので普通程度かもしれない

 後半の展開に関しては、やや急だなと感じたりした。好みもあるかもしれないけど感情に乗り切れない部分はあったかも。

総評

 気になるところが0ではないけど、全体を通してハイクオリティで良い感じのテンポで進んで行ったので、特に中だるみするとかも無くすっと完走できましたね。短さ故か短さを強みに組み立ててるのかは分からないけど。
 再三短いとは言ってるけど、短いっていうのはメインの話をしっかり中心に据えて大きく脱線することもなくまとまりよく進められてるっていうことなので、極端に説明不足だったり展開が飛び飛びというわけでも無いので、決してマイナスポイントじゃないです。

 展開は典型的なボーイミーツガール物ですが、サブキャラ含め、感情の表現が丁寧で世界観に引き込まれる感じがあった。特別一癖あるというわけでもないので好みが大きく分かれることも無いと思うので、少しでも気になるのであれば手に取ってみてもいいと思いました。万一スカしてもダメージは小さいし

 

感想・総評(ネタバレあり)

 以下ネタバレありパートになります。注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここでアトリを好きになりました。恋に落ちちゃった…

 プレイ前情報は基本さらう程度ですが、一応このCGも公式サイトに公開されて見てはいたけど、あの流れでこんな笑顔を見せられちゃうとね…好きになるでしょ
 結構この作品では主人公に感情移入する度合いが大きくて。別に脚失くしてるとかいい学校から落ちぶれたとかそんな境遇は一ミリも似てませんが。夏生に感情移入しやすい分、そこに寄り添ってくれるアトリの姿が愛おしくなってきて。

 なのでその分アトリのログを見たときの絶望よ。もちろんロボット物だし何かしらそんな感じの「転」の展開はあるんだろうなって予想はしてたんだけど、予想してても感情移入しすぎてたせいでダメージがやばかった。マジで苦しかったです。普通に吐きそうになってしまった。

 感情が無く無機質だけど、マスターだからという理由で夏生のそばに居る姿を見てるのも辛いし、夏生以外の面々と交流するときの今までの感情豊かなアトリの姿を後ろで眺めているのも辛かった…
 でも、そんな風に無機質ながらも寄り添ってくれる姿を見てると、やっぱりどこか感情があるような気がして。その正体が一体何なのか、真の感情なのかロボットとしても責務なだけなのか、そんなことを考えてしまった。

 と、そんな感じで良い感じに進行していたのだが、前にもふれたように後半の展開、というかヤスダ周りの展開がどうにも急展開に感じられてしまって、ちょっと残念な節はあった。もう一山二山は欲しかったかなぁ。OPで出てきた雨の中涙を流すアトリのCG死ぬほど期待していたのだが、どうにも感情移入しきれないまま過ぎ去ってしまった。良いシーン、のはずなのだが。まあでもちゃんと感情を自覚したアトリの姿は心に来るものがあったね。

 このシーン周りで言うと、バドエンCGがちょっとゾクッとしたね。あまりにも露骨なCGだったのでとりあえず最初は放置して後から回収したけど、バドエンあまりにも救いなさ過ぎて笑っちゃう。バドエンだから仕方ないのだが。
 ああいうジト目の暗い顔が大好物です。別にドMじゃないです。蔑まれるような目で見られて興奮してるとかじゃないです。

 アトリが感情を自覚してからは、ちゃんとしたラブコメみたいな雰囲気になりつつ、確実に迎える別れのタイミングが迫ってくる状況… 知り得る絶対的な別れはまた辛いんだよね。所謂セカイ系というやつだけど、どうにもこういう展開に弱いらしい。

 「45日間」のタイムリミットを重視していた割に、45日目を待たずに終わるんかいと思ったが、エピローグで綺麗な回収の仕方してて良いなって思った。
 別でも話をしたけど、こういう別れエンドの作品のエピローグでなんやかんやあって再開する的な展開が正直好きじゃないので、どうせこれも再開して終わりなんやろなぁと思いながら読み進めてたけど、この最後の一日の回収はとても好きだった。ただ良くも悪くもエピローグ含めて一つの作品になってしまったので、最後に時を経て再開するところまでが一括りとされてしまったのは個人的には何とも言えない気持ちになるね。

 

 つらつらと話しましたが、やっぱりアトリのログを見てアトリの感情は作り物に過ぎなかったって夏生が実感してしまうシーンがとても辛くてとても良かった。その前からヒタヒタと迫っていた不穏な空気があそこで一気に爆発して押し寄せてきてしまったのでダメージが大きかったね…
 ヤスダ周りの話だけどうにかしてくれとは思うが、全体的に心揺さぶられて終始楽しみながらプレイできたので良かったかな。

 アトリはこれで終わりじゃなく、この後アニメも控えてるので、非常に楽しみ。あの世界観と感情をアニメで見られると思うとワクワクするので、頼むから良いものを作ってくれよ…
 ANIPLEX.EXEから出てるからアニメもアニプレがやるもんだと思ってたけどそういうわけでも無かったね。何でだろ。

 アニメとか今後の展開に期待と不安を織り交ぜながら今回は締めます。ぴょこぴょこ動くアトリが見れるといいな。

 あ、同スタッフで作られてるGINKAも楽しみにしてます。夏発売らしいので気長に待っていよう。

 

2023年2月8日