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GINKA 感想

 GINKAの感想です。発売してすぐやったけど少し感想は温めました。

 発売日にノベゲ買うのは久しぶりだったけどこれまで発売日に買ったやつ皆続編とかだったので新作で買うのは初めてだったり。プロジェクト発表されてから1年ちょっとだったと思うけど、ゲームの展開としては結構早い方かなと思いつつ長いこと待った気もしますね。あまりプロジェクト発表から追っかけてるコンテンツが無いので新鮮っちゃ新鮮でした

 

あらすじ

 5年前の夏祭りの夜、銀花は神隠しにあって消えてしまった。銀花の幼馴染だった主人公、青羽流星は銀花が神隠しに遭った後、一度島を離れたが5年の時を経てふと戻ってきた。

 銀花は神隠しに遭っていなかったのではないか、今も普通に生活しているのではないかと淡い期待を抱いていたが、5年経った今でも銀花は以前行方知れずのままだと知る。

 そんな折、一人の少女と出会う。少女の姿は5年前の銀花と同じ姿をしていたが、記憶も朧気で彼女自身のことも分からない。しかし、彼女は流星の名前と彼への恋心だけは覚えていた。

 5年前の姿で現れたギンカと流星が過ごす不思議で短い夏の物語。

 

登場人物

ギンカ

 島に帰ってきた流星の前に現れた5年前の銀花そっくりな少女。

 彼女が唯一覚えている流星の名前と恋心から、島に帰って来た流星と共に過ごしては流星のお嫁さんになるべく奔走中

海野ひまわり

 島に住む中学生の少女。流星が過去島に居た頃によく遊んでいたため流星に懐いている。

 元気で明るい性格で、都会への憧れを持っている。

鈴代リン

 島に住む高校生の少女。流星よりも年上で、流星のみならず島の子供達のお姉さん的存在。

 誰に対しても人当りが良く面倒見が良い。活動的で物事の中心によくいる。

荒羅伎なずな

 島の学校の先生。流星が島に居た時には流星のことも教えていた。

 しっかりとしており、流星含め多くの生徒から慕われ、頼られている。古武術の達人で、授業でも教えている。

七守草二

 島に住む高校生の青年。流星と同い年で昔から流星とはウマが合わずやや対立的。

 政治家家系であったり本人の真面目な性格から、島の活性化などに向けた活動もしている。

謎の少女

 流星たちの前に現れた少女。どこか銀花に似ている。

 

感想・総評(ネタバレなし)

 率直な感想としては思ってたのとはだいぶ違ったな~という感じ。別に悪い意味ではないです。

 GINKA自体プロジェクト開始時からATRIを意識した感じで来てて、販促とかもまあそうだし事前情報的にも似たような場面設定だったりキャラの立ち位置とかもあったけどその実中身としては結構ATRIとは違ったなと。スタートとゴールは一緒だけど辿る道は全然違うみたいな印象。

 これが良いか悪いかはまあ人それぞれかなとは思いますが、かくいう私はATRIっぽいのを期待してた節が結構あるのでそこはちょっと引っかかった部分もあるけど普通に面白かったのでいいやという気持ちです。

 ストーリーとしては、あらすじでも出てきた「神隠し」とかの伝奇もののお話。個人的にはあまりこういう系統の話に触れてこなかったので物珍しく読んでました。ATRIがSF寄りだった分そこも結構ギャップに感じた。

 GINKAがどう、という話では無いが、SFとかの話(それこそATRIのヒューマノイドとか)は何の気も無く受け入れられるけど神様とかそういう類になると受け入れるのにちょっと引っかかるのは何なんでしょうかね…

 ちょいちょい小難しい部分とかもあったけど構成としては結構親切だったのでよく分らんってなる場面があんま無かったのは良かったかも。一気に読んだからかもしれませんが、話の複雑さに対して理解はスムーズだったかなと。

 

 ストーリーはもちろんなんだけど、ATRIに続いてやっぱりグラフィックとか音楽もハイクオリティだなとは感じますね。演出面は特に更に良くなった印象です。

 OPの作詞紺野アスタ作曲松本文紀の圧倒的信頼感にCV長谷川育美の強さがエグくて発売前に映像公開されてから無限に聴いてたし聴いてる。早急にサントラを出せ下さい。某バンドアニメにどっぷりハマった人間なので長谷川育美の歌つえ~~~って無限に思ってる。

youtu.be

 ATRIの時もOPでがっつり惹かれてEDで情緒をぶっ壊されたのでEDワクワクしてたんですが、座組全く違くてひっくり返った。ついでに発売直後に公式からネタバレされたので一緒にひっくり返った。結構楽しみにしてたんですがね… ブシの癒着

 まあ曲自体は普通にめっちゃいい曲でしたよ。あのラストからスタッフロールで流れるのに合いすぎてる曲ですごい良い余韻に浸れました。
 青木陽菜さんも某バンドアニメで見て知ってましたが、歌がうめぇ。この世に歌上手い人間多過ぎですね。

 

 全体を通して相変わらずのクオリティの高さは健在で、ノベルゲームとしての土台がしっかりとしてるのは当たり前のように見えて本当に凄いなぁと思いますね。ATRIの時もでしたが、これでロープラなのは大丈夫なのか?と思うレベルなのでもっと上げてもいいよ。

 1年ちょっと首を長くして待ち続けた作品でしたが、期待を裏切らない面白さと完成度でした。ATRIに比べて若干人を選ぶ話かもしれないけど、世界観の美しさと儚さが良く感じられるいい作品でした。

 

感想・総評(ネタバレあり)

 以下ネタバレパート

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Kawaiiの過剰摂取

 出てきたときちょっと笑っちゃったけど、終えてみるとあまりにもブラックジョーク過ぎて笑いづらい案件。何という所に仕込みを入れているんだ…

 キャラの可愛さは相変わらず強かったな~。ひまわりちゃん可愛いねちょっとゲーム貸してあげるからウチ来ない?

 キャラは皆しっかりとしてるんだけど、その中でも一番印象に残ったのはなずちゃん先生だったり。事前情報が公式サイトの軽い紹介とTGSと発売前の動画だけで、そこ見てる感じ割とポンコツよりの先生なのかなとか思ってたけど全然そんなこと無くて、めっちゃちゃんとしたいい先生やんけ…と思いながら読んでました。

 流星に対して「私の心残り」って言ってたのにややも引っかかりながらまあ回収されるまで進めるか~とか思ってたら想像以上に重苦しいことやってて3割増し位でダメージ受けた。呪いのスチルかっこよかったね…怖かったけど。
 現世に帰ってきて見事な変貌ぶりを見せてたけど、それでもちゃんと先生として、罪の意識もあるだろうけど流星たちに手助けする様は本当に良い人なんだなぁって。

 

 銀花は最初出てきたときのツンケン感からこうジワ~っと変化していくのが良かったね。いや最初から割とボロは出てた気はするけど。ただ設定と言うか状態についてはあまりにも…という感じで辛かったね。
 ギンカとして欠けた想いがあって、銀花はそれをちゃんと自覚した上でああ振る舞ってるけど、段々とそう行かなくなってきて、芽生える心とそうしてはいけない現実との板挟みで辛くなっていくのが… 幸せな夢のシーンは、最初読んでるときは流星側の気持ちで見てたので半分ホラーみたいな感じに見てたけど、銀花の想いをちゃんと咀嚼するとより一層の絶望シーンになって二度おいしいですね。

 幸せな夢の最後、銀花が5年前の夏祭りのやり直しを望んで最後ぶつ切りにされた所で普通に声が出てしまった。悲しいね…
 そんなシーンもあったので大ラスで今の銀花と流星で5年前の焼き直しやってくれるかな~とか思ってましたが普通に新しい5年前の回収でしたね。そっちもいいけど焼き直しやってくれた方が個人的にはおいしかったかも。

 

 ストーリー全体として、扱ってるテーマも所以かもしれないけどそれなりに複雑だったなーと。夢の世界と現世とで場面の転換が挟まったけど、夢の世界でギンカ、銀花が居た理由とか呪いとかちゃんと汲み取れないと現世に行ってからごちゃつきそうかなとは思う。私も露骨に詰まったわけじゃないけどちょっと咀嚼に時間はかかった。

 最初、流星視点だったから”銀花が神隠しに遭った”のミスリードを軸に展開してたけど、正史が明かされた時に夢の世界での流星、銀花の存在が一気に変わるから、今まで見てきたものからちゃんと自分の認識も正史にチューニングしないと分からないまま進行しちゃうかも。

 クソbもとい花憐さんが出てきてからは核心に迫ってく分更に複雑だったね。行動原理が割と極端な人だからただ核心部に進んでくんじゃなくて私怨強めだったので、こっち側から見てちょっと遠い立ち位置だった分小難しさは増してたかも。
 現世入ってからは結構二転三転の展開が降ってくるから忙しいっちゃ忙しいけどこまめに回想挟んでくるのでここなんだっけとかはならなかったかな。親切設計。

 

 ストーリー複雑な分ちょいちょい仕込みもあって、綺麗に回収されてると面白いな~ってなる。伏線回収大好きマン。

 メイン所だけど一番なるほどな~ってなったのはギンカの存在と銀花との関係性だよね。神隠しに遭った銀花がギンカとして流星のことと恋心だけを持って現れたって掴みからちゃんと銀花の想いにまで昇華させつつ物語の軸としてブレなかったのは凄い綺麗だった。
 ギンカの理由付けをしたうえで銀花が失った想いと芽生えていく想いを描いていって、流星と銀花の恋物語としてやりきったのはよく出来てるな~と思いながら見てた。銀花とギンカが同一世界上に共存できる分、”四ノ宮銀花”の流星への想いがいろんな形で見れたから恋愛ものとしても凄い丁寧に心情が描かれてるように感じられて良かった。

 流星視点から見ると、銀花はやっぱり5年前のままで止まってる分、ギンカに昔の想いを馳せる部分が多かったかなと思うけど(流星が、というより見てる私がかも)、成長した銀花は銀花で一から想いを育んでいくことになった訳で、同時進行的に味わえるのはおいしい。

 銀花としては、幼い自分が居て、自分が失った想いを持ちながら過ごしているのを間近で見ている分、捨てたはずの想いを再起させられる場面が多くてそういう面では強い葛藤に苛まれ続けたのかなと。ギンカを刺すシーンとかは正にだろうけど、今の自分と、あり得たはずの自分の差を受け止め続けた帰結としてギンカを刺して呪いにまでなった訳で、感情としては中々他の作品とかじゃ見ることのないタイプの感じだったからおいしいね~ってムシャムシャしてた。

 でも、そういう経験をした上で自分の感情を自覚したのに、改変後の世界での銀花と流星の話、少なすぎません?もっと出せ。もっとおいしいよ。FD待ってます。
 まあゲームのストーリーとしてあそこから続けたら終わり所が分かんなくなりそうってのは何と無くわかるけど、エピローグとかおまけで何か欲しかった感はある。さっきも書いたけど夏祭りの焼き直しはやってもよかったんじゃないかな~とは思ってる。

 

 書き続けてると無限に終わらない気がしてきたのでまとめに入りますが、ちゃんと面白かったので良かったな~というのがまず思いましたね。

 発売前の段階で事前情報が少なかったり少なからずATRIを意識してた部分があったりで、まあATRIは死ぬほど面白かったので露骨にハズレることは無いだろうとは思ってたけど、ATRIの二の次にならないかなぁという不安もややあった。
 ATRIっぽさを求めてたのは事実だけど同じようなのをまたお出しされてもう~んとはなっただろうし、そこはやや不安だったけどちゃんとGINKAとしての面白さを確立しつつATRIでもあった良い所はちゃんと引き継いでて良かった。

 道中は複雑な話だったりやや陰鬱な話が展開されたりはしてたけど、ちゃんと流星と銀花の物語としてまとめてくれたしそこを一番大事にしてくれてたので、期待通りに綺麗な青春物語がお出しされて良かったですね。

 GINKA終えた後、カレーが食べたくなったのとATRIをプレイしたくなりました。食ったしやった。ついでに初周のATRI感想を添えておこう。

hrurukku.hatenablog.com

 来年はATRIアニメが控えてますが、アニメバズってゲーム人気出てバンバカ展開してくれねぇかな~~~って思ってます。続編…程のボリュームは無くてもいいというかあり過ぎると蛇足になりそうなのでいいんですが、もうちょっとだけその先の日常を見たい気持ちはあるので、何かしら実現するといいなって。ATRIもGINKAも。

 この座組でまた新作作ることになったらすぐに知らせてくれ。全力で待機する。でも待ち続けるのも辛いので発表して1か月くらいで発売してくれ(傲慢)

 見上げてごらん、夜空の星をとかも気になってるのでやろうかな~とも思いつつGINKA再走したい気持ちもある。普通にやりたいノベゲ沢山あるんですけどどうにも時間が取れない。いや時間はあるんだけどやり始めるけど持ってる時間以上を割いてしまうので…

 GINKA、1年ちょい待ち続けましたがまたいい体験をさせてもらいました。ATRIの時より喪失感は小さかった。綺麗に終わってたからかなぁ。ATRIの時はもうあの世界に帰れないのか…ってしばらく引きずってましたからねこの人。ひめ島はいつでも迎え入れてくれますか?

 季節としての夏は好きじゃないですが、こういう美しい夏は好きです。また美しい夏に戻れる日を楽しみにしてます。ヤーー!!

 

2023年11月17日