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さくらの雲*スカアレットの恋(さくレット) 感想

 さくらの雲*スカアレットの恋、さくレットを終えたので感想書き綴っていきます。後半はネタバレあり感想なので悪しからず。

 他に書くものもありそうだが鉄は熱いうちに打て、感想は熱いうちに書けということで完走して余韻感じながら書いていきます。

 ラストのネタバレあり感想が本編みたいなものです。

 

あらすじ

 主人公、風見司は2020年を生きる青年。ある日、桜の木の下で本を読んでいると、気づけば100年前、1920年の東京、帝都へとタイムスリップしていた。

 そんな1920年の帝都で出会った金髪碧眼の私立探偵、所長に拾ってもらい、助手として共に探偵業をしていくこととなる。

 そんな右も左も分からぬままタイムスリップをして、所長と共に帝都を奔走する中、司の前に軍服姿の少女、アララギが突然に表れる。彼女は司のタイムスリップに関わっていると言い、司はアララギに未来へ帰れる方法を聞く。するとアララギは1枚の電報を渡し、司に「歪みを正しなさい」と言った。そうすれば未来へ帰れると告げた。

 司は、この時代のことも、自分がタイムスリップした理由も分からないながらも所長と共に、舞い込んでくる様々な謎、事件を解決すべく日々過ごしていくこととなる…

 

 導入としてはこんな感じ。その後、探偵業の依頼や活動を経て出会った人たちと行動を共にしたり、更なる事件が有ったりとして話は進んでいく。

 中でもストーリーに大きく関わってくる明確な敵として現れた陸軍憲兵加藤大尉は、司を「未来人」と看破し、不穏な動向を見せる。

 男キャラがしっかりしてる作品は大体ストーリーちゃんとしてるのでいいよね。加藤大尉以外にも、所長達を手助けしてくれる刑事の柳楽さんや、突飛なカラクリを作る万斎など、いろんな男キャラが出てきます。

 男キャラの紹介ばっかしてもしょうがないので以下ヒロイン紹介

 

登場人物

所長

 帝都に「チェリィ探偵事務所」を構える英国から来た私立探偵。事務所としては閑古鳥が鳴く様な状態で、お金には目がない。
 1920年に降り立った司と初めて接触した人物であり、司が未来人だとしる数少ない人物の一人。司から受けた、未来からタイムスリップした謎を解明して自分を未来へ返してほしい。という依頼をこなすため、司を助手として迎え入れ共に生活することになる。

 

不知出遠子


 名家である不知出家の娘であり、生粋のお嬢様。どこか庶民と違う感覚を持つが、人を見ることは上手く、かつやや押しが強い。司の不自然さに目を付け、司が未来から来たことを自供させた。
 お嬢様であることから、日々の学業や様々な習い事で忙しいが、その合間を縫ってチェリィ探偵事務所によく遊びに来る。

 

メリッサ

 不知出家につかえるメイド。普段は遠子と行動を共にしている。クールな佇まいだが、行動に感情が現れやすい。
 家事全般が出来、メイドとしての立ち振る舞いは完璧に近いが、料理にはやや難あり

 

水神蓮

 女学校に通う下町育ちの女の子。この時代における一般的な女性の一人であり、庶民的。真面目で素直な女の子。
 司のことをミラノ帰りの人間と思っており、普段の自分の生活とは大きく異なる司の話を聞いては驚いたり興味を持ったりする。

 

感想・総評(ネタバレなしパート)

 全体としてみると、良い感じのところに収まったなぁという感じですね。良い点悪い点気になる点色々ありますが、総合的には十分に面白かったです。特にストーリー面に関しては終盤にかけて怒涛の伏線回収と新事実の応酬で、とても良かったです。

 タイムスリップものの作品自体は私としても色々な作品を見てきましたが、さくレットはタイムスリップもののSFとして十分な完成度だったのじゃないかなと。
 タイムスリップをした原因と再びのタイムスリップによる未来への帰還がこの物語の主軸ですが、道中の伏線の張り方から最後にこの主軸を一気に回収していく流れは見ていて楽しかったですね。

 タイムスリップともう一つ、所長が私立探偵ということもあり、道中は基本探偵もの定番の事件が起きてそれを解決する、みたいな展開が続きますが、こちらも中々に良かった。事件が起きて~と言ったものの、さくレットは基本依頼を受けてそれを解決する、という流れなのでかの有名な探偵ものの様に頻繁に事件に遭遇してその謎を解明する、というよりかは物探し、人探しのような話も多め。
 ただちゃんと探偵らしいお話もあって、途中で始まるミステリートレイン編はベターなテーマですが、伏線がしっかりしててかつさくレット全体としてのストーリーにも伏線やある種の答えを投じるような話になっていてとても完成度は高かったと思う。

 

良かった点

・ストーリーは総合して綿密に練られてて終盤の盛り上がりは特に良かった。(前述)

・所長が可愛い。めちゃ良いキャラ。

・CGが綺麗。枚数自体は並程度ですが雰囲気にも合っていて良かったですね。演出的にも見張るものがあった。

気になった点

・個別√の恋愛描写がやや不足なように感じた。個人的には大して重視してる部分でも無いのであまり気にもしないけどそこ重視してる人はちょっと気になってしまうかも

・一部の音声が小さい。設定の問題ですが、各話のタイトルなど(章ごとに話数区切りとして小題がついてる)で読み上げが入るけどどうやらそこら辺のボイスが効果音扱いとなってるらしい。効果音下げる人は聞き取りづらいかもしれないので注意

・やや序、中盤は中だるみする感じ。話としてつまらないとかでは無いが主軸に明確に関わってるようには見えないので詰まるかも。頑張って乗り越えてほしい。

 

総評

 気になる点こそあれど、私はメインのストーリーが非常に良かったと感じてるので、満足です。キャラクターもそこそこ登場しますが、皆キャラが立っていてそれぞれ明確な役割が有ったり、様々な場面で関わってきたりするので、複雑にはなりますが見ていて退屈するみたいなことはそう無かった。

 探偵ものということでオムニバス形式のようなストーリー展開にもなりがちだけど、それぞれで全体への伏線を貼りつつ各個の事件を解決していったり、少しずつ全体の謎への回答を小出しに紐解いていくのは丁寧でよかった。

 ネタバレになるので後述ですが、ラストの締め方は思っていた展開と違って随分と綺麗に締めてくれたのでホッとすると同時に満足に終われました。

 再三ですが、何よりストーリーが面白いので、ストーリー重視だったりSFものが好きだったりするのであれば勝って損はないかと。

 

 

感想・総評(ネタバレあり)

以下ネタバレあり感想になります。未プレイの方は注意!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 所長がカッコいい。可愛い。初歩的なことだよ。

 とりあえず所長がどタイプでした。別にジャケ買いしたわけじゃなく正直あまり気にしてなかったんですけど、最初にすぐ分かっちゃったね。所長完全に俺の好きなタイプだって。こういうイケメン姉御肌だけど可愛い一面持つキャラに弱いんですよ。

 流石にこのCG出たときはシリアスシーンなのに所長イケメン過ぎてキャー!ってなっちゃったよね。顔立ち良くて高身長で頭も切れて(?)人のことちゃんと見てて気にかけてくれてて最高の女じゃんね…好きです。桜の木の下いたら俺も所長の真横にタイムスリップさせてくれませんか?

 

 とまあ所長語りはとりあえずここら辺にしておいて、ネタバレあり感想ということでいろいろと話していきます。

 まずは上でも書いたストーリー全般の話ですが、メリッサ√から所長√にかけて怒涛の展開過ぎて震えましたね。アララギが最初の方に放った帝都に一人だけいるという異能者の話、まあ流石に加藤大尉はミスリードだろうとは思ってたけどメリッサとはちょっと予想してなかった。
 第一候補は遠子で次点で万斎とかかなぁと思ってたが全然違った。遠子はややミスリード誘導っぽい雰囲気あったような気もしなくもないけどどうなんだろ。万斎はただの天才というね。

 メリッサ√のミステリートレインの話も中々に丁寧に書かれてて良かったね。私も犯人誰だろうと予想しながら読んでた。全く当たらなかったが。わからんて。

 

 所長ルートは本当に怒涛というか。第一の解決編である司の話はそれこそ常識が覆されたというか。2020年という年号を提示されるとどうしても現実と同じって思いこまされるよね。今は2023年だがまあそれはそれとして。人間自身に近いものを提示されると脳内で無意識的に関係性を見出そうとしてしまうそうで、中々の盲点。最初の東京スカイタワーも創作物あるあるの現物名称がダメ的な奴だと解釈しちゃったけどそれすらもミスリードというね。
 ちなみに筆者は所長が扉越しに話してる時、所長が司にお前は私のことが好きなんだろ?とか言ってわーって何か幸せな雰囲気になるんだとか思ってました。全然違ったのでそれもあって余計にびっくりしてしまった。先見の明が無いや。

 義手の話は、そう言われればHシーンでも手袋つけっぱなのはそういうことなのかと。メリッサにしてもちゃんと三日月のあざが描写されてるけどやや見づらいような状態にされてるのも意図的と。まあ基本ストーリー中に入るHシーンは飛ばすので解決編やった後にスチル覗いただけなので道中気づきようも無かったですが。
 途中で所長が、司が来てから電気代が跳ね上がった、なんて話してたけどそんな一人増えただけで跳ね上がるか?と思ったけどなるほどな~ってなった。こういう些細なひっかかりが色々あったんだけどそこら辺も大体ちゃんと回収してくれるので上手いな~って。

 

 第二の解決編もまた最後なので全部にケリを付けるぞという感じで、今まで関わってきた人たち総動員でまさに最終決戦のような。万斎がかわいそうなパートでもあったが… 正直小夜子さんの破談の手紙は一筆わざとしたためてもらったのかなとか思ってたけどマジのガチだったのでかわいそうになった。
 タイムパラドックス論はあんま詳しくないから分からないけど、司が帰ってから未来を変えることが叶ったってことは、未来への変化は即時的なものであっていかようにでも出来ると捉えられるから、あの場で万斎は本当に小夜子さんにフラれた、と思い込ませることが出来れば別に嘘文でも話は成立したとは思うのでただただ万斎がかわいそうな結果に。ただ思い込ませて加藤が消えても再び小夜子さんと万斎がくっついたら加藤が復活する可能性もあったとも言えなくはないのかな。

 

 やや気になる点のお話していくけど、歪みの話は結局どこまで許容されてるのかという話。

 未来人による歪みの影響で未来が本来の道筋と逸れるから未来に返すことが叶わない、というのが大前提だけど、歪みがどこまで広がれば戻れなくなるのか。結局加藤を潰した後歪みを解消して司が未来に戻る運びになったけど、雪葉は言わずもがなの最大の歪みだし、ナリゴンとかも資産とデカい企業有してる時点で加藤による歪みの影響は残ってるし、そこら辺は割とガバいなとは感じた。
 歪みを直してから未来を変える、すなわち歪みを直して司が居なくなってから再び歪ませる、みたいな行為をしているわけだが、歪みというのは過去の事象でしか観測されないものなのだろうかね。未来が確定してないという理論に基づいているならまあ、とは思うが、個人の生き方や性格、信条だったりは司や加藤とかかわった時点で何らかの変化を起こしてるわけで、そういう根っこの歪みは潰しようないよなぁ。
 まあ気にしすぎてもしょうがないような気もするし、加藤が消えた後どの程度の歪みを解消したかもわからんから、加藤が影響を及ぼした歪み全体に対しては些末なものだったのかもしれん。

 

 あと、これは些細なことだけど、万斎がタイムマシン理論の話してた時、負の質量をもつ物質をアンチマターと称してたけど、これはどうなんだ?って感じた。まあ大正の一個人の発想の話だから現実部分とそこまで則している必要も無いのはそうなんだけど、外から見てる身としてはタキオン粒子をアンチマターを表されるのはちょっとん?ってなる。気にしすぎだろうか。
 ただ割としっかり特殊相対性理論とか時間の話とかしててはえ~ってなった。ここら辺の学問はほぼかじってないので分からなかったけど。

 

 そういえば、ネタバレなしの方で話した締めの話ですが、こういったタイムスリップもの無いしは別れの結末が確定しているような話だと、大概分かれる直前に一発ヤッたり、アフターとかでなんやかんやあって再び再開する…みたいな展開が敷かれることがあるけど、さくレットはそれが無くて良かった。
 一発ヤるのはまあ最悪いいとして、アフターでもっかい出会う話はあまり好きじゃなく、言うなればご都合展開なので、どうにも受け付けない自分が居る。まあこういう層が居るからアフターとかエピローグとかおまけとか言って本編と分けたところで話をしているのだろうけど。別れで終わることを好まない層もいるだろうから(そっちの方が多数派なのか?)そのために補完的に再開してハッピーエンドの様に振る舞う作品が多くなってるんだろう。ただ私は好かないって話だから別にあってもいいとは思うけどやや冷めてしまう自分が居るのでそういうのも無くスパッと終わらせてくれて良かった。
 それはそれとして、司が居る時点でおそらく確定していた二人の子供が産まれる未来はそれこそ最大級の歪みなのでは…?(ぶり返すな)

 

 そんなこんなで感想も締めとしましょうか。
 細かな点で気になるところこそあれど、話の本筋はブレることも無く、全体の展開を維持したまま伏線をちりばめては各√を経由してパーソナルな部分も世界観的な部分もしっかりと回収しながら進んでいくのはとても良かったと思いました。
 ルートが一本道な文、回答の提示がやりやすいのもあって見てる側としても段階的な理解が出来たり、各重大要素を都度都度かみ砕いて嚥下することが出来たから話の進行としても結構優しい感じだったね。伏線回収の際もリマインド的に回想が一瞬入ることも多くて、複雑に絡み合った話だけどその分こっち側にも配慮して丁寧に作られてた。

 まあ所長ルートが最後になるのが分かってしまったので遠いよ~とは少し思ってしまった。ケーキのイチゴは最初に食べる派。

 タイムリープ物の宿命ではあるんだけど、どうにも咲かなかった枝の話は気になってしまうよねってところはある。メリッサ√とかあの後どうしたのかの話はちょっと書いてほしい。

 最後にまた脱線しちゃったけど、こういうSF伏線回収モノは大好物なのでめちゃめちゃ楽しく読ませてもらいました。ありがとうさくレット。

 

2023年1月18日